マルチ署名の設定
マルチ署名は、XRP Ledgerのトランザクションを承認する3種類の方法の1つです。マルチ署名の他にレギュラーキーとマスターキーで署名する方法があります。3種類のトランザクション承認方法を自由に組み合わせて使用できるようにアドレスを設定できます。
このチュートリアルでは、アドレスのマルチ署名を有効にする方法を説明します。
前提条件
-
トランザクションを送信するための十分なXRPが供給されていて、新しい署名者リストの必要準備金を満たしている資金供給のあるXRP Ledgerアドレスが必要です。
-
MultiSignReserve Amendmentが有効な場合、マルチ署名を使用するには、使用する署名と署名者の数に関わらず、アカウントの準備金として5 XRPが必要です。(MultiSignReserve Amendmentは2019年4月7日以降、本番環境のXRP Ledgerで有効になっています。)
-
MultiSignReserve Amendmentが有効ではないテストネットワークでは、マルチ署名を使用するにはアカウント準備金に通常よりも多くのXRPが必要となります。必要額は、リストの署名者の数に応じて増加します。
-
XRP Ledgerフォーマットでキーペアを生成するツールを利用できる必要があります。この処理に
rippled
サーバーを使用する場合は、wallet_proposeメソッドが管理者専用であるため、管理者アクセス権限が必要です。 -
あるいは、すでにXRP Ledgerアドレスを持っている人をあなたのアドレスの署名者として承認するには、その人または組織のアカウントアドレスを知っている必要があります。
-
マルチ署名は使用可能である必要があります。(MultiSign Amendmentは2016年6月27日以降、本番環境のXRP Ledgerで有効になっています。)
1. 構成の設計
含めたい署名者の数を決定します(最大8)。特定のトランザクションに必要な署名の数に基づいて、署名者リストの定数と署名者の重みを選択します。シンプルな「M-of-N」の署名設定では、各署名者に重み 1
を割り当て、リストの定数が「M」になるように設定します。これが必要な署名の数です。
2. メンバーキーの準備
署名者リストにメンバーとして加える有効な形式のXRP Ledgerアドレスが1つ以上必要です。あなた、またはあなたが選択した署名者は、これらのアドレスに関連付けられた秘密鍵を知っておく必要があります。アドレスは、レジャーに存在する資金供給されたアカウントにすることもできますが、必ずしもそうである必要はありません。
wallet_proposeメソッドを使用して新しいアドレスを生成できます。例:
$ rippled wallet_propose
Loading: "/etc/opt/ripple/rippled.cfg"
Connecting to 127.0.0.1:5005
{
"result" : {
"account_id" : "rnRJ4dpSBKDR2M1itf4Ah6tZZm5xuNZFPH",
"key_type" : "secp256k1",
"master_key" : "FLOG SEND GOES CUFF GAGE FAT ANTI DEL GUM TIRE ISLE BEAR",
"master_seed" : "snheH5UUjU4CWqiNVLny2k21TyKPC",
"master_seed_hex" : "A9F859765EB8614D26809836382AFB82",
"public_key" : "aBR4hxFXcDNHnGYvTiqb2KU8TTTV1cYV9wXTAuz2DjBm7S8TYEBU",
"public_key_hex" : "03C09A5D112B393D531E4F092E3A5769A5752129F0A9C55C61B3A226BB9B567B9B",
"status" : "success"
}
}
生成した各アドレスのaccount_id
(XRP Ledgerアドレス)とmaster_seed
(シークレットキー)をメモします。
3. SignerListSetトランザクションの送信
通常の方法(シングルシグネチャー)でSignerListSetトランザクションに署名して送信します。これによりSignerListがXRP Ledgerのアドレスに関連付けられるので、これ以降はSignerListの複数メンバーがあなたの代わりにトランザクションに署名するマルチ署名が可能となります。
この例ではSignerListに3人のメンバーが含まれています。また、マルチ署名済みトランザクションにはrsA2LpzuawewSBQXkiju3YQTMzW13pAAdWの署名と、リストの他の2人のメンバーからの少なくとも1つの署名を必要とするように、重みと定数が設定されています。
Caution: Never submit a secret key to a server you do not control. Do not send a secret key unencrypted over the network.
$ rippled submit shqZZy2Rzs9ZqWTCQAdqc3bKgxnYq '{
> "Flags": 0,
> "TransactionType": "SignerListSet",
> "Account": "rnBFvgZphmN39GWzUJeUitaP22Fr9be75H",
> "Fee": "10000",
> "SignerQuorum": 3,
> "SignerEntries": [
> {
> "SignerEntry": {
> "Account": "rsA2LpzuawewSBQXkiju3YQTMzW13pAAdW",
> "SignerWeight": 2
> }
> },
> {
> "SignerEntry": {
> "Account": "rUpy3eEg8rqjqfUoLeBnZkscbKbFsKXC3v",
> "SignerWeight": 1
> }
> },
> {
> "SignerEntry": {
> "Account": "raKEEVSGnKSD9Zyvxu4z6Pqpm4ABH8FS6n",
> "SignerWeight": 1
> }
> }
> ]
> }'
Loading: "/etc/opt/ripple/rippled.cfg"
Connecting to 127.0.0.1:5005
{
"result" : {
"engine_result" : "tesSUCCESS",
"engine_result_code" : 0,
"engine_result_message" : "The transaction was applied. Only final in a validated ledger.",
"status" : "success",
"tx_blob" : "12000C2200000000240000000120230000000368400000000000271073210303E20EC6B4A39A629815AE02C0A1393B9225E3B890CAE45B59F42FA29BE9668D74473045022100BEDFA12502C66DDCB64521972E5356F4DB965F553853D53D4C69B4897F11B4780220595202D1E080345B65BAF8EBD6CA161C227F1B62C7E72EA5CA282B9434A6F04281142DECAB42CA805119A9BA2FF305C9AFA12F0B86A1F4EB1300028114204288D2E47F8EF6C99BCC457966320D12409711E1EB13000181147908A7F0EDD48EA896C3580A399F0EE78611C8E3E1EB13000181143A4C02EA95AD6AC3BED92FA036E0BBFB712C030CE1F1",
"tx_json" : {
"Account" : "rnBFvgZphmN39GWzUJeUitaP22Fr9be75H",
"Fee" : "10000",
"Flags" : 0,
"Sequence" : 1,
"SignerEntries" : [
{
"SignerEntry" : {
"Account" : "rsA2LpzuawewSBQXkiju3YQTMzW13pAAdW",
"SignerWeight" : 2
}
},
{
"SignerEntry" : {
"Account" : "rUpy3eEg8rqjqfUoLeBnZkscbKbFsKXC3v",
"SignerWeight" : 1
}
},
{
"SignerEntry" : {
"Account" : "raKEEVSGnKSD9Zyvxu4z6Pqpm4ABH8FS6n",
"SignerWeight" : 1
}
}
],
"SignerQuorum" : 3,
"SigningPubKey" : "0303E20EC6B4A39A629815AE02C0A1393B9225E3B890CAE45B59F42FA29BE9668D",
"TransactionType" : "SignerListSet",
"TxnSignature" : "3045022100BEDFA12502C66DDCB64521972E5356F4DB965F553853D53D4C69B4897F11B4780220595202D1E080345B65BAF8EBD6CA161C227F1B62C7E72EA5CA282B9434A6F042",
"hash" : "3950D98AD20DA52EBB1F3937EF32F382D74092A4C8DF9A0B1A06ED25200B5756"
}
}
}
トランザクションの結果がtesSUCCESSであることを確認します。それ以外の場合、トランザクションは失敗しています。スタンドアロンモードまたは本番環境以外のネットワークで問題が発生した場合は、マルチ署名が有効であることを確認してください。
注記: MultiSignReserve Amendmentが有効ではない場合は、SignerListのメンバーの増加に応じて、アドレスの所有者準備金のXRP額を増加する必要があります。アドレスに十分なXRPがないと、トランザクションはtecINSUFFICIENT_RESERVEで失敗します。MultiSignReserve Amendmentが有効な場合は、SignerListの署名者の数に関係なく所有者準備金として必要なXRPは5 XRPです。関連項目: SignerListと準備金
4. 検証の待機
本番環境のネットワークやRipple Test Netでは、レジャーが自動的に閉鎖するまでに4~7秒かかる場合があります。
スタンドアロンモードでrippled
を実行している場合は、ledger_acceptメソッドを使用してレジャーを手動で閉鎖します。
5. 新しい署名者リストの確認
account_objectsメソッドを使用して、SignerListに最新の検証済みレジャーのアドレスが関連付けられていることを確認します。
通常、アカウントは異なるタイプのオブジェクト(トラストラインやオファーなど)を複数所有できます。このチュートリアルで新しいアドレスに資金を供給した場合、SignerListが応答の唯一のオブジェクトになります。
$ rippled account_objects rEuLyBCvcw4CFmzv8RepSiAoNgF8tTGJQC validated
Loading: "/etc/opt/ripple/rippled.cfg"
Connecting to 127.0.0.1:5005
{
"result" : {
"account" : "rEuLyBCvcw4CFmzv8RepSiAoNgF8tTGJQC",
"account_objects" : [
{
"Flags" : 0,
"LedgerEntryType" : "SignerList",
"OwnerNode" : "0000000000000000",
"PreviousTxnID" : "8FDC18960455C196A8C4DE0D24799209A21F4A17E32102B5162BD79466B90222",
"PreviousTxnLgrSeq" : 5,
"SignerEntries" : [
{
"SignerEntry" : {
"Account" : "rsA2LpzuawewSBQXkiju3YQTMzW13pAAdW",
"SignerWeight" : 2
}
},
{
"SignerEntry" : {
"Account" : "rsA2LpzuawewSBQXkiju3YQTMzW13pAAdW",
"SignerWeight" : 2
}
},
{
"SignerEntry" : {
"Account" : "rsA2LpzuawewSBQXkiju3YQTMzW13pAAdW",
"SignerWeight" : 2
}
}
],
"SignerListID" : 0,
"SignerQuorum" : 3,
"index" : "79FD203E4DDDF2EA78B798C963487120C048C78652A28682425E47C96D016F92"
}
],
"ledger_hash" : "56E81069F06492FB410A70218C08169BE3AB3CFD5AEA20E999662D81DC361D9F",
"ledger_index" : 5,
"status" : "success",
"validated" : true
}
}
SignerListが予期した内容で存在していれば、アドレスでマルチ署名ができるようになります。
6. その他のステップ
これで、アドレスからマルチ署名済みトランザクションを送信できます。次の操作も実行できます。
asfDisableMaster
フラグを使用してAccountSetトランザクションを送信し、アドレスのマスターキーペアを無効化。- SetRegularKeyトランザクションを送信してアドレスのレギュラーキーペアを削除(レギュラーキーペアをすでに設定している場合)。